2014年06月27日

サッカー日本代表が、決勝トーナメントに進出できなかった理由


サッカー日本代表が、決勝トーナメントに進出できなかった理由

Business Media 誠
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 サッカー日本代表がブラジルW杯で決勝トーナメント進出を逃した。初のベスト8入りを期待されたが、2002年の日韓、2010年の南アフリカ大会に続く3度目のベスト16入りも叶わずグループリーグ敗退で涙を飲んだ。

 本当に残念である。とはいえ、その一言で終えるわけにはいかない。期待を裏切ってしまったチームには今後同じ轍を踏まないためにも検証が必要だ。一体、何がこのような結果を招いてしまったのか。テクニカルな面についての辛口トークは評論家諸氏にお任せするとして、その理由の1つに筆者は「指揮官の組織力の欠如」が挙げられると思う。

 実際、ブラジル大会に臨む日本代表の取材を行っていて複数の選手や関係者からザックことアルベルト・ザッケローニ監督の“ほころび”を耳にした。

 「監督は特定の選手としか、まともに話さない」

 これは日本代表メンバーに名を連ねている選手の証言だ。話を総合すると、特定の選手というのは本田圭佑と長友佑都、長谷部誠の3人。他のメンバーについては「まったく話さないわけではないが、3人と比べて明らかに対応の仕方が素っ気なかった」という。

 ザッケローニ監督は今大会に向け、本田を中心としたチーム作りを行ってきた。だから本田に関しては肩入れするのも当然のことだったのかもしれないが、それを意識し過ぎる余りに他のメンバーから「偏重」と捉えられてしまっていたのも、また事実なのである。

 本田と長友ら一部のメンバーが指揮官から“えこひいき”されていると思い込む声が、日本代表チーム内から噴出している――。そんなトーンの報道はギリシャ戦敗退後、一部の夕刊紙でも取り上げられた。ザックジャパンを応援するサポーターからは「そんなバカな」「また夕刊紙特有の妄想記事だろう」などと一笑に付す否定的な声がネット上でも多数出て大炎上していたが、信じたくない気持ちもよく分かる。しかし、これは残念なことに事実だ。

 本田がCSKAモスクワからACミランへ、そして長友がACチェゼーナからインテルミラノへそれぞれ移籍した際、水面下で2人の新天地となるイタリア・セリエAの両ビッグクラブの幹部に口利きするなど橋渡し役を担っていたのは他ならぬザッケローニ監督だった。これはサッカー関係者の間では広く知られているエピソードだ。代表選手の一部は、その裏事情を知っていたこともあって「本田と長友ばかりが特別扱いされているのではないか」と嫉妬を覚えてしまったフシも見受けられる。

 「ザッケローニ監督がよかれと思ってやったことが、このチームでは選手と指揮官との間に逆にミゾを生む要因となってしまう。そんなことが多々あった」と、ある代表スタッフは嘆いていた。

●もう1人の「特定の選手」

 そして、もう1人の「特定の選手」。ザックジャパンのキャプテンに任命されていた長谷部をめぐっては、こんな出来事もあった。ザッケローニ監督は2013年7月に「キリンチャレンジカップ2013」の代表メンバーとして当時所属先のヴォルフスブルグで出場機会に恵まれていなかった長谷部(現ニュルンベルグ)を招集。その際に「長谷部は所属クラブで出番に恵まれていないので、代表で起用する」と口にしたことで物議を醸したのだ。

 就任当初に「所属するクラブで結果を残しているレギュラー選手だけが代表に選ばれる資格がある。私はこの考えを曲げるつもりはないし、どんなことがあっても貫き続ける」と明言していた言葉はあっさりと覆され、それまで代表メンバーに名を連ねながら落選した選手らから「やっぱり長谷部さんは特別扱いなのか」というブーイングが上がったのである。

 長谷部は2010年の南アフリカ大会から長らく代表のキャプテンを任されていた、いわばチームの精神的支柱。経験、能力もともに豊富で、そう簡単に外せないのは分かっている。だが、ザッケローニ監督がまずかったのは自ら発したはずのマニフェストを何の説明もなく撤回してしまったことだろう。

 この時の長谷部だけでなく、指揮官は今大会でもACミランで鳴かず飛ばずの本田、そしてマンチェスター・ユナイテッドで不遇にさらされている香川を招へいしている。もちろん、本田と香川についても両者以上のパフォーマンスを見せられるプレーヤーがいるかと問われれば「NO」。だが、就任当初に口にしていたはずの方針は、所属クラブで結果を出せずにいた2人を招へいしたことで、結局ここでも自らの“ブレ”が図らずも証明されてしまった格好と言える。

 「長谷部も、そして本田も香川も日本代表には不可欠な選手。それは当たり前であろう。ただ、ザックは日本代表を自分の手で大きく変えたいと思うが余り、最初から余計な制約を日本のメディアへ口にし過ぎて自分で自分の首を絞めてしまった。しかもザックはイタリア・セリエAで多くの名門クラブチームで指揮を執ってきた時から、我々現地メディアによって『変心グセがある』と指摘されていたのだから、それをいまだもって自覚していないと言われても仕方がない」と分析するのは、イタリアのスポーツ紙『ガゼッタ・デロ・スポルト』のニーノ・バッサーニ記者だ。

●ザックの“悪い病気”

 こうした言行不一致はチーム内外から明らかな不信感を招く要因につながる。テクニカルの面については触れるつもりはなかったが、思えばベンチからギリシャ戦(5月19日)で試合終盤に指示された「パワープレー」も“ブレ”につながるだろう。就任当初、ザッケローニ監督は「パワープレー封印」を高らかに宣言していたからである。

 母国イタリアで成功と失敗を重ねながら指導者としての経験を積み上げたザッケローニ監督。しかし史上最強と呼ばれて求められるものも大きかった日本代表チームでは今回のW杯で期待以上の成績を残せずに終わった。初めて指揮を執った母国以外の国、そして自身初のナショナルチーム監督という重責は、彼の中で想像以上に重くのしかかっていたようである。前出のバッサーニ記者は、こうも続けた。

 「肩入れや変心グセはイタリアであれば、メディアからすぐに指摘されてバッシングされる。だからセリエAでの監督時代は、そういう批判を恐れるから表面化したとしてもすぐに修正できた。何でも持ち上げる傾向の強い日本メディアは彼にとって優し過ぎたのだろう。ザック自身も『日本人は優しくて、勤勉だ』と満足そうに評していたが、批判がほとんどなく全幅の信頼を置かれたことで彼の心に緩みが生まれてしまったのだと思う。

 それに各国から自己主張の強いプレーヤーが多く集まるセリエAのクラブチームと違って、日本のプレーヤーは基本的に大半が大人しい。誰も表立って文句を言わないから、ザックの“悪い病気”は慢性化して最後は手が付けられないような状態になってしまう。今大会の日本はつまり、そういうことになってしまったのではないか」

●失敗の責任

 さまざまな敗因があるだろうが、ザッケローニ監督の組織力が日本代表においてフィットできなかったのは間違いのないところ。結果論であれこれ言うのはおかしいという指摘もあるかもしれないが、結果を出せなければ批判されるのは当然だ。

 ひと昔前のように「決勝トーナメントには進めなかったけど、精一杯がんばりましたね」と、ただ拍手を送っているだけでは、この先も日本代表に成長など見込めない。「2050年までにFIFA・W杯を日本で開催し、日本代表はその大会の優勝チームとなる」という「JFA(日本サッカー協会)2005年宣言」を遂行するための猶予は、今大会を含め10回しか残されていないのだ。だからこそザッケローニ監督は結果を求められ、その対価として180万ユーロ(約2億5000万円)もの高い年俸を得ていたのである。

 失敗の責任は負わなければならないだろう。組織社会に生きるビジネスパーソンにとっても、ザックジャパンの失敗は決して他人事とは言えない。

[臼北信行,Business Media 誠]


posted by エリコ at 13:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | サッカー日本代表
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